ソーシャルリサーチ論・観察法結果1(A課題)

 ソーシャルリサーチ論では非参与観察の課題をやってもらい、最終回に作成したレポートをもとに簡単な報告をしてもらいました。そのプレゼンの際に全員に評価シートを渡し、1位と2位を選んでもらいました。以下課題と結果、各班の簡単なテーマ紹介をします。2つの課題に分かれてもらったので、まずは、A課題の方。なお、私の感想やコメントについては、後日追記していきます。

A課題
●まず、大学の生協食堂で観察をして、何らかの問い(今後の観察のためのリサーチ・クエスチョン)を立てる。そのリサーチ・クエスチョンに沿って、二回目の観察計画を立てて観察し、その結果や分かったこと、リサーチ・クエスチョンの修正などをレポート(各グループでA4で2枚程度)にまとめる。締め切りは7月27日(金)
1 グループ全員でとりあえず自由に観察してみる(全体観察、10〜30分程度)
※あまりじろじろと見て絡まれないように
2 戻ってきて(カフェや別スペースでもOK)、気づいたことを出し合い、リサーチ・クエスチョン(〜はどうなっているのか? 〜は何人いるのか? 〜なぜ〜なのか?など)をできるだけ多く立ててみる。(ブレインストーミング
3 作ったリサーチ・クエスチョンの中から何か一つ選んで、それに基づいて観察対象、観察場所を決めて、観察し、データ収集(より焦点化された観察。15分〜40分)
※ここでのポイントは、「観察対象」を何に定めるのか、ということを意識して二回目の観察戦略を作ること。たとえば、「女子学生のコミュニケーション」を対象として、「食堂でのコミュニケーション」と「広場でのコミュニケーション」を比較する、というのもあり。二回目の観察ではグループ内で二手に分かれてもよい。
4 以下の3点を盛り込んで各班で一つレポートをつくり、30日に簡単な報告。

  • α 初回観察:そこで出された気づいたこと、そこからどのようなリサーチ・クエスチョンを作ったか、どのリサーチ・クエスチョンを採用したか。そのリサーチ・クエスチョンに基づいてどのような二回目の観察計画を立てたか。
  • β 二回目の観察の結果:データを収集したことで分かったこと。
  • γ 観察を踏まえて以後の考察課題:次回観察では(行くとするならば)、どういう課題を設定するか。

※レポートの冒頭には、観察日時や、観察時間、観察場所、参加者名、天候など(その他必要だと思う)基礎的情報も記載すること
※参加者は一人ひとり、観察をやってみての反省・気づいたことをコメントとして書く(班のレポートと一緒に(できれば誰か取りまとめて)提出)

各自、それぞれの班からの5分のプレゼンを聞いて、1位と2位を選んでもらいました。

1位:4班(14票)、2班(6票)
2位:4班(6票)、5班(6票)

なお、各班の観察テーマ(全体観察から立てたRQ)・観察場所は以下。4班は服装の類型化という目の付けどころが受けたのではないでしょうか。観察の仕方もシンプルでよかったです。2班は「類友」という命題と観察との接合が見事。レポートとしてのまとまりもよかったのでは。5班はラウンジの観察で他のところと少し異質な感じが独自性があったということでしょうか。

1 どのくらいの割合の人が日傘をさしているか。(天候によってその割合はどう変化するか?) 【食堂外のテラス】
2 昼時に学生食堂に来ている人は何人グループが多いのだろうか(人数の把握)。「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、グループの各メンバーの雰囲気や格好は実際に類似している場合が多いのだろうか。 【食堂ホール・ラウンジ・外のスペース】
3 携帯をいじっている人はどのくらいいるのか?(全体で携帯をいじっている人の割合、集団と一人だとどちらの場合利用する割合が多いか、携帯で何をしているか、ガラケースマホか) 【食堂ホール】
4 露出について観察する。足の露出について、以下の四つに分類して、それぞれの人数を数え、傾向を調べる。(?足首まですっぽり型(ジーンズやロングスカート、マキシ丈ワンピースなど)、?生足型(膝頭にかからない短いズボンやスカートなど)、?グレーゾーン型(ふくらはぎの真ん中〜膝頭ぐらいまでの丈のズボンやスカート、?と?の間の領域)、?生足もどき型(短い丈をはいているもののトレンカやタイツを履いている状態)) 【情報処理センター前の小屋のあたりのキャンパス】
5 飲み物を持っている人は何人いるか。一人で課題をやっている人はなぜ図書館でなくラウンジで勉強するのか。5分以上スマホを見ている人は何を見ているのか。喋っている人と勉強している人の割合。(※実際に2回目の観察でやっていることは、課題をやっている人、音楽を聴いてる、飲み物を持っている、携帯をいじっている、のそれぞれについてその行為をしているかどうかを観察し、外を向いて座っているか、内を向いて座っているかを観察している) 【生協ラウンジ】
6 何色の服を着ている人が多いか。 【ラウンジ】
7 一人客はどのように行動しているか。カウンター席とカウンター席以外の一人客の違いはどうなっているか。【生協食堂】

 コメントを簡単に。
 テーマ設定に関して言うと、1)一回目の観察をもとにした形でテーマが立っていること、2)観察という方法に適合的なテーマになっていること、3)興味深い発見が得られそうなテーマであること、などが重要だと思います。私が見た感じだと、2班、3班、4班、6班、7班は初回観察からうまく導き出したテーマ設定ができていると思いました。1班は少し飛躍したテーマ設定の感。5班は観察という方法と少し適していないテーマ設定かも、という感じがしました。
 発見の面白さ、という点で言うと、やはり2班と4班が頭一つ抜けている感じ。これは類友という一般的な命題と関連付けたこととか、スカートの類型化を行う、など、「概念」とうまく関連付けて観察をしているからです。
 観察方法としては、数を数えてくれたところとか、表を作ってくれたところ、工夫をしてくれていました。
 その他、授業でも言及しましたが、3班の携帯をいじる意味に関する考察は面白かった。6班の色の観察から、「色」というのをどう定義すればよいのか?という疑問への到達は観察(研究)の醍醐味を示していてとてもよかった。
 5班の問いは荒削りですが、表を作って、それぞれの行為について観察しているのはとてもよい。7班は問いの立て方が堅実。もう少し人数がいたらもっと面白くできたかも。1班は細かいカテゴリーを設定してきちんと数えているのがとてもよかったです。