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Do!ソシオロジー―現代日本を社会学で診る (有斐閣アルマ)

Do!ソシオロジー―現代日本を社会学で診る (有斐閣アルマ)

 

女の子は、私たちがいっしょに店にはいって行ったからアベックと間違えた。普通です。誰でもいちおうそう思うでしょう。事情を知らないから、二人でならんではいった位置から早急に判断したのです。これでした。暗示となったのは!
 私たちは、失礼ながらあなたをはじめ、貴署の方々もふくめて、佐山とお時とがならんで死んでいるから、情死と判断してしまったのです。私は、今、それを知りました。…(中略)…。佐山とお時とはばらばらな二つの点でした。その点が相寄った状態になっていたのを見て、われわれは間違った線を引いて結んでしまったのです。
 男と女とが抱きあわんばかりにして、くっついて死んでいれば、ただちに「情死」だと認定した誤謬は、しかし、笑われるべきではないでしょう。それは、古来、何万何千の情死死体がそうだったからです。誰も疑う者はありません。そして他殺でなく、心中死体となれば、検死もとかく他殺死体ほど厳重でなく、捜査の発動はまったくありません。(172頁)