どっちが良いか【科学哲学】

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

 第8章の科学理論を意味論的に捉え、科学的実在論を擁護するというところが勉強になった。いや、これが分かったから科学や科学哲学が分かったということではないのだが、普段論文や文章を書く際に使っている「モデル」や「理論」などの言葉の曖昧さとか、そういうことを考えるきっかけとなるというか。結局、自分のやっていることはここまで厳密にできることではないのだけど、それでも、こうした科学論的議論は、論理や文章を作っていく上で鏡になるというか。

 あと、この本では、ウールガーやラトゥールが、極端や社会構成主義独立性テーゼ知識テーゼを双方とも否定する)として出てくるが、本書の仮想敵(説得すべき相手)として設定される反実在論を登場させるためのツマとしての役割だけしかしていない。また、クーンも出てこないし科学社会学的な話はしていない。この辺りは政策的対応と科学的妥当性の関係など、医学系でこの種の話をする上で重要な論点とも関係してくると思うので、伊勢田本の第4章、第5章で補っていこうと思う。
 対話形式など工夫を凝らした哲学本といえば、野矢先生のものが代表だけども、柏木達彦シリーズもまた読みたくなった。