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東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

 難しいことを論じているところよりも、東京の街について、(都市論とかの人にとっては常識なのだろうが)知らなかったことについて勉強になった。後半に行くにつれてあらわになる2人の相違は、学者と批評家の差異か、生まれ育った場所の差異か、生真面目さと露悪的といったパーソナリティの差異か。

 北川隆吉や二木立が、川上武にインタビューをする形で、川上のこれまでの研究を振り返った書。とても面白い。川上武は武谷三男の弟子だが、これぞ医療社会学だという感じがする。すでに70年代に「福祉の医療化」という概念を提出していたり、技術と技術制度という峻別をしていたり、技術の性質を分けていたり、技術と経営を統合して分析しようとしていたり…。こうした医局を出て地域で医療実践をし、医療問題を論じてきた人たちの著作には注目していく必要がある。

 しかし、こういった技術論を含みこんだ医療の社会学は、社会学者が医療を対象にしていてもとても難しく、医師が社会科学をすることによって初めて可能になる仕事だと思う(当然、専門職による独占のきわみである医療について外部のものが知り、理解することは難しい)。二木立さんの医療経済・政策学も、――自身そういった主旨のことを言っているが――そうした医療を知るものだからできるような性質のものだと思う。しかし、そうなってくると社会(科)学はどうするか…。