『現代思想』の「特集 自立を強いられる社会」

 生活保護におけるいわゆる自立支援施策に対して批判的。当然、11月27日の福祉ネットワークでとりあげられていた、横浜市の自立支援施策の取り組みやそれをモデルとして持ち上げる岩田正美さんなどとも対立の立場だろう。ただ、岩田さんについては『世界』12月号の論文なんかを参照してみたり、『ホームレス/現代社会/福祉国家』(←順番違うかも?)を見ると、そんな単純なことを言っているわけではないことが分かるが(テレビでは、審議会委員として、生活保護制度の改革に携わらざるを得ない立場からの発言であっただろう)。
 しかし、著者たちは、自立支援施策への批判として、①賃労働による自立の自明視と、②対象者を類型化する、という点を挙げているが、いずれの論拠も弱いというか、単純に過ぎるのではないかと感じてしまった。また、その裏面として、自立/依存の構築性や、BIの脱スティグマ化効果を強調しているが、この辺もどうか。結果としてBIが過大に評価されていると同時に、つまらない使われ方をしているようにも感じられたが(また、不払いに対する支払いがBIであるという話は、そういう話があるという紹介であるとは言え、ちょっと勇み足ではないか)。
 同誌には、立岩真也と白石なんたらさんの対談もあり、そこにおける立岩のBIに対する態度との違いが興味深い。結局、この論文の著者たちは、最近一部で評判の悪い、いわゆる「ネオリベ批判左翼」の典型例として位置づけられてしまうのだろう。この辺の議論とどう向き合うか。
 ただし、貧困は不平等とは違い規範的な概念である、といった指摘とか、前も言ってたけど、改めて気づかされる点はいくつかある。

  • 森千賀子2006「『施設化』する公営団地」『現代思想』34(14):100-108.  

 とても興味深い論考。差異による連帯とか、弱者の連帯とか言っていることがいかに甘っちょろいことなのかがよく分かる。