論文メモ【社会調査】【ライフストーリー】

  • 朴沙羅2011「物語から歴史へ――社会学のオーラルヒストリー研究の試み」『ソシオロジ』56(1): 39-54.

結構きっぱりと桜井厚さんの対話的構築主義とか、倉石一郎さんの反省的なライフストーリー研究を批判している。素朴な実証主義の主張にも見えるが、感覚的には、盛山さんが言うような真理や正義を目標として探求を行うみたいな感じで、歴史の事実を追うことで、語りによって構築されることの機能を見出して行こうというような感じかな。まっとうな議論だとは思うけど。

 オーラルヒストリーが収集されるとき、その語られた出来事を「事実」として聞き取ることは、研究上の義務だとさえ言える。例えば、マイノリティの生活史が収集されるとき、差別された経験が語られたとしよう。差別された経験は語り手によってまぎれもない事実である。差別された人間は「そんな感じ方もある」とか「現実とは多様なものだ」とか「経験は人それぞれだ」といった台詞によって無視されないように、全身全霊で、「私の苦痛はそんなものじゃない!」と主張しなければならない。だから、事実をめぐる闘争は必ず熾烈なものになる。調査者はそのような語り手を前にして「経験の多様性」や「意味の多義性」を主張することができるだろうか(45)。