いただく

これはすごいですよ。博論の前半部が本書にあたるのですが、それだけで500ページ。どんだけ書いたんだよ…。次をにおわす形の末尾の文章がにくい。

「ボランティア」の誕生と終焉―〈贈与のパラドックス〉の知識社会学―

「ボランティア」の誕生と終焉―〈贈与のパラドックス〉の知識社会学―

仁平典宏『「ボランティア」の誕生と終焉−−〈贈与のパラドックス〉の知識社会学名古屋大学出版会、2011年、6,930円、562頁


「善意」と「冷笑」の狭間で ―― 。人々を社会参加へと枠づける言葉は、どのような政治的・社会的文脈で生まれ、いかなる帰結をもたらしてきたのか。その言葉がまとう形はどのように作動するのか。動員モデルと意味論分析を介して日本におけるボランティア言説の展開をたどり、参加型市民社会のあり方を鋭く問いなおす。シニシズムを脱することはできるのか。

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目次

序 章 「ボランティア」をめぐる語りと〈贈与のパラドックス〉――問題設定と方法
1 問題の所在
2 動員モデル
3 贈与のパラドックス
4 「ボランティア」的なものを扱う視座と方法
補論1 「市民社会」に分有される〈贈与〉
補論2 〈贈与〉と権力 ―― 〈犬〉の政治学

     第Ⅰ部
第1章 「ボランティア」のささやかな誕生―― 戦前期日本における〈贈与のパラドックス〉解決の諸形式
1 純粋贈与への試行 ―― 「慈善」の意味論
2 社会を経由する贈与-交換
3 価値体系の間
4 「社会奉仕」の誕生 ―― この平等なるもの
5 方面委員の意味論 ―― 〈贈与のパラドックス〉の社会工学的解決
6 「ボランティア」のささやかな誕生 ―― 〈越境する身体〉の分出
7 「滅私奉公」という最終解決
8 小 括 ―― 〈贈与のパラドックス〉の別の抜け方について

第2章 戦後改革と不分明地帯の再構築――1945〜1950年代前半
1 はじめに
2 「社会の民主化」の二要件
3 再来する「不分明地帯」(1)――旧生活保護法・民生委員・社会福祉法人
4 再来する「不分明地帯」(2)――赤い羽根と終戦直後の「総動員」
5 再来する「不分明地帯」(3)――社会福祉協議会をめぐって
6 小 括

第3章 〈政治〉と交錯する自発性と贈与――1950年代前半〜1960年
1 はじめに
2 「自主性」の領有戦――「国家に対する社会の自律」をめぐって
3 社会保障削減と共同募金批判――「国家による社会権の保障」をめぐって
4 1950年代の「ボランティア」論の構図

第4章 分出する「ボランティア」――1959〜1970年
1 はじめに
2 社会福祉協議会の「ボランティア」推進――生産されるコトバとモノ
3 ボランティアの同定問題――〈人間〉と〈政治〉の間
4 誰が「ボランティア」と名指されたのか?――〈身体〉の検出

     第Ⅱ部
第5章 「慰問の兄ちゃん姉ちゃん」たちの《1968》―― 大阪ボランティア協会とソーシャル・アクション
1 はじめに
2 大阪ボランティア協会の設立と施設訪問グループ
3 何が伝達され、何が生まれたのか
4 小 括 ―― 〈犬〉と「楽しさ」をめぐって

第6章 國士と市民の邂逅―― 右派の創った参加型市民社会の成立と変容
1 はじめに
2 非政治としての「奉仕」
3 〈戦友〉の共感共同体
4 〈政治〉への上昇・〈国民〉への拡張
5 陶冶としての〈奉仕〉
6 「國士」と「市民」の交錯 in 1970s
7 小 括

     第Ⅲ部
第7章 ボランティア論の自己効用論的転回――転換する「戦後」 : 1970年代
1 はじめに
2 「民主化要件」のコンテクストの変容
3 〈ボランティア/奉仕〉コードの完成
4 「ボランティア」の自己効用論的転回
5 自己効用的ボランティア論の環境
6 小 括 ―― 〈贈与のパラドックス〉の解決とその外部

第8章 実体化する〈交換〉・忘却される〈政治〉 ―― 1980年代
1 はじめに
2 統治性と接合する「ボランティア」
3 自己効用の規範化 ―― 〈楽しさ〉の位置価をめぐって
4 実体化する〈交換〉
5 〈交換〉と他者 ―― 自己効用論が見落としたもの

第9章 「ボランティア」の充満と〈終焉〉――互酬性・NPO・経営論的転回 : 1990〜2000年代
1 はじめに
2 民主化要件?とボランティア施策 ―― 介入/自律化
3 民主化要件?とボランティア施策 ―― 社会保障の拡大/ネオリベラリズム
4 ボランティアの〈終焉〉(1) ―― 充満と融解
5 ボランティアの〈終焉〉(2) ―― 経営論的転回とNPO
6 〈終焉〉後の風景 ―― 〈贈与〉と〈政治〉の場所

終 章 〈贈与〉の居場所 ―― まとめと含意
1 〈贈与のパラドックス〉の展開の果て ―― 知見の整理
2 動員モデルを再考する
3 シニシズムをくぐり抜ける