休日の読書

期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)

期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)

 第四章「転向について」で、社会科学者として医師への言及あり。
 

文学で考えれば、中野重治の転向もある種の知的生産になった。『むらぎも』(講談社文芸文庫)は偉大な作品だと思いますが、あれも転向なくしては書けなかった。文学は日本では千年の伝統があるから練れてるんですよ。日本の社会科学は歴史が浅いから、転向体験を自分の肥やしにして何かをつくるということがむずかしい。
 例外はあるんです。その一人が佐久病院院長の若月俊一です。かれは東大生だったとき捕まる。教授の恩情主義のおかげでその後も医局に勤めるんだけど、戦争中、そこを離れて長野県の佐久に行くでしょ。そのきっかけになったのは島木健作の『生活の探求』(一九三七年)なんです。中野重治のような文学者が読むと「ひどい作品じゃないか」となるんだけど、若月俊一にとっては重大な目標になる。ひたむきに生きたいと、村の老人のさまざまな病気に対処する方法を考えるんですよ。戦争が終わって東京に帰るチャンスがあったのに帰らない。佐久に農村病のセンターをつくる。その病院を左翼が乗っ取ろうとしたとき、土地の病人本位ということで、それに立ち向かうんです。かれは転向が生みだしたすぐれた例じゃないかな。

 その後、松田道雄についても論じている。
 

その意味では松田道雄もそうだと思う。……。


鈴木先生(7) (アクションコミックス)

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 昨日発売で即買いしてしまい、寝床で悶絶・爆笑してしまった。いやあまりのカオスに笑うしかない感じ。密度が濃い。鈴木先生フリークスに貸し出しをしなくては。