主観/客観

破線のマリス (講談社文庫)

破線のマリス (講談社文庫)

 「ミステリー」というジャンルがどういう範囲を指すのかもよく分からない人間であるが、長時間暇つぶしをしなければならず、勉強もしたくなかったため、買ってみる。著者の名前も知っていたし。
 「もはや、客観なんてなくて、すべての表現は主観によって切り取られている。ドキュメンタリーもしかり」という言は、言い尽くされたクリシェであるから、その指摘とメディアリテラシーの啓蒙自体は目新しいことではない。大事なのは、そうしたものだ、ということを文章や映像技術を使ってどうおもしろく、説得的に表現していくかだと思う。
 それとは関係なく、ストーリー的に、結構最初の方で、主人公の映像編集者を見つめる第三者の視点が誰なのかわかってしまった。著者は、そこの動機を、紋切り型の家族像に基づいて設定しているため、今一つの感が。でもおもしろかったですよ。

ドキュメンタリーは嘘をつく

ドキュメンタリーは嘘をつく

 そういえば昨年読んだこの本。「破線のマリス」は、これとセットで読むといいかもしれない。書かれていることは、社会科学的には言いつくされたことであっても、調査法の授業とかで、事例や課題に使ってみると役に立つかも、です。